絶対に途切れないオンライン会議

オピニオン

2021/02/14 18:30

 この1年で、「オンライン会議」が劇的に増えた。昔でいえば、大企業のテレビ会議だ。全世界に拠点があり、国内でも支店や営業所を多く抱える企業が活用していたイメージのオンライン会議だが、コロナ禍で一気に普及した。とはいえ、まだまだ不十分な点は多い。今後、定番ツールとして定着しそうなオンライン会議について、進化の方向性について考えてみたい。

 J.D. パワー ジャパンが昨年夏に調査した「J.D. パワー 2020年WEB会議システム顧客満足度調査」によると、「WEB会議システム利用中の問題・不具合」で最も多かったのは「音声が聞き取りにくい」で35%。次いで、「途中、接続が切れる(つながらなくなる)」で26%だった。

 オンライン会議で情報伝達のほとんどを占める音声が聞き取れなかったり、そもそも接続が切れてしまっては、会議は成り立たない。声による会話ができないときに文字によるチャットで代替することもあるが、効率は格段に落ちてしまう。オンライン会議は、まだまだ改善の余地がある。
 

 会議中に固まらない、フリーズフリーは最もニーズが高い改善ポイントだろう。画像がフリーズするだけであればまだいいが、声が途切れたり聞こえなくなったりすると、会議自体が継続できなくなる。オンライン会議の性質上ある程度は仕方ないともいえるが、ぜひとも改善すべきポイントだ。メイン回線にWi-Fiを使っているとすれば、いつでもサブ回線に切り替えられるようにしてはどうか。

 例えば、SIMが挿せるPCを使い、いつでもSIM回線に切り替えられるようにして、遅延やフリーズを回避したり、電話回線をサブにできるように組み合わせたり、などの仕組みは、ぜひともほしいところだ。絶対に途切れないオンライン会議を安価に実現できれば、多くのユーザーを獲得できるだろう。

 フリーズフリーがすぐには難しくとも、今、自分の声や画像が相手にどのように伝わっているかを監視する「モニター機能」ぐらいなら、比較的簡単に実現できそうだ。発言の冒頭に「聞こえておりますでしょうか」「見えておりますでしょうか」は、さすがにもうダサい。自分の声や映像が相手にどう届いているかが分からければ、こう言いたくなるのも人情だ。

 自分の姿や声がどのように伝わっているかをモニターできれば安心。トラブっても対処のしようがある。会議の前に音声や映像をチェックできる機能はたいてい備わっているが、実際の会議中にも常に確認できるようにしてほしい。
 
さまざまな機能があるネット会議システムの進化ポイントは

 実際の会議とオンライン会議で、最も大きく異なるのは、非言語のコミュニケーションだ。声は聞こえるし顔色も多少は分かるが、会議室の空気感みたいなものは、そぎ落とされてしまう。

 その一つが視線だ。発言者は何を見て話しているのか、誰を見ているのか。参加者は発言者を見ているのか、共有された画像を見ているのか、はたまた別のものを見ているのか。発言者は、自分の言葉がきちんと理解されているかどうかが分からない。せめて自分を見ているのか、よそ見をしているのかが分かれば、理解されやすい話し方や内容を変えることもできる。

 会議だけでなく、テレワーク中に常にカメラやスピーカーを常時オンライン状態にしておくことがルールになっている会社があるという。私の同僚は、「実際に出社している状態と変わらないのでは」と指摘する。個人的には勘弁してほしい。常に誰かに見られているのではないかという疑念を持ちつつ仕事をすることになる。

 実際のオフィスでは、近くに人が来ればすぐ分かるし、画面に集中していたとしても「気配」を感じることができる。必ずしも隙を見てさぼってやろうと思っているわけではないが、知らない間に監視されているというのはやはり精神衛生上、よろしくない。

 さすがに、歩み寄って肩をポンとたたくようなことまでは期待しない。しかし、ある種の非言語のコミュニケーションともいえる「気配」も感じられるような機能が備われば、オンライン会議も、より使えるものに進化するのではないだろうか。(BCN・道越一郎)