いよいよ中国トップのAI翻訳機「iFLYTEK」が日本に上陸

経営戦略

2020/07/24 19:30

 「記者が汽車で帰社した」という同音異義語が三つ並ぶ日本語を、瞬時に的確な英語に翻訳するーー。中国のAI翻訳機トップのiFLYTEK(アイフライテック)の「iFLYTEK 翻訳機2.0」が7月1日、日本に上陸した。7月20日から順次、AmazonなどECを中心に発売している。

7月1日に日本で発売された「iFLYTEK(アイフライテック)翻訳機2.0」

中国政府がAI先進企業として後押し

 iFLYTEKは1999年に創立。本社は、中国・上海市から新幹線で約2.5時間の安徽省合肥市に構える。同社の名前を世界的に一躍有名にしたのが、中国政府が2017年11月に「AI大国」を目指すため、スマートシティ分野を阿里巴巴集団(アリババ)、医療映像分野を騰訊控股(テンセント)、自動運転分野を百度(バイドゥ)、音声認識分野を科大訊控(iFLYTEK)の4社を重点育成企業として指定したことだ。

 19年6月に上海で開催された「CES Asia 2019」でホンダ中国とアリババが車載用システム「Honda CONNECT」の共同開発で提携することを発表して話題になったが、その中の音声認識でiFLYTEKも入っている。昨年のCES Asiaの会場でも、翻訳機や音声認識のブースはiFLYTEKが多くを占めていた。
 
7月1日に日本で発売された「iFLYTEK(アイフライテック)翻訳機2.0」

 日本法人のiFLYTEKジャパンAIソリューションズは20年1月8日に設立。日本市場の進出について孫嘉人取締役副社長COOは、「日本の消費者は目が厳しく、新しい技術や製品に対する関心がとても高い」と、中国の最新テクノロジーが日本でどう評価されるかに興味を示す。

 本来なら今頃、東京五輪が開幕し、訪日外国人客であふれかえっていて、翻訳機も飛ぶように売れていたことだろう。しかし、新型コロナウイルスによって目算が大きく狂った。この点について孫副社長は、「延期となった来年に向けて販売パートナーを開拓するとともに、テレワーク需要などに対応する機能のバージョンアップも考えている」と語る。

 中国では、リアルタイムで精度の高い文字起こしができるAIボイスレコーダーも販売しており、その一部の機能をソフトで搭載することを検討しているようだ。
 
iFLYTEKジャパンAIソリューションズの孫嘉人取締役副社長COO

0.5秒の最速で翻訳、カメラ翻訳や語学学習も

 日本の第1弾となるiFLYTEK翻訳機2.0は、新型コロナの影響で市場が縮小していることから、5月30日にクラウドファンディングで目標金額30万円の小規模で開始した。しかし、ふたを開けてみれば1日で目標金額を軽々とクリアし、400万円以上の調達に成功した。7月1日に販売を開始し、7月20日から順次、AmazonなどECを中心に発売している。

 主な特徴は、0.5秒の最速な翻訳性能のほか、59言語、200カ国の言語の音声翻訳に対応する。ことわざや金融、医療、IT、司法、スポーツなど多くの分野の専門用語も翻訳するという。

 使い方は簡単で、翻訳する言語を選んで、自分が話すときは本体手前の「Japanese」のボタンを押しながら話すと、スピーカーから相手の言語に翻訳された言葉が聞こえる。逆に相手が話す際は、自分で本体奥の「ABC」ボタンを押しながら、マイクを向けるようにして相手に話してもらうことで、日本語に翻訳された言葉がスピーカーから流れる。

 本体の裏にはカメラが搭載されており、11言語のカメラ翻訳も可能。例えば、海外のレストランのメニューや街中の看板などをカメラに映してボタンを押せば、瞬時に何が書かれているか翻訳してくれる。

 試しに取材時にあった機器に表示されていた中国語をカメラ翻訳してみたら、なんてことはない、バッテリ残量が低くて充電をうながしている意味だった。
 
11言語のカメラ翻訳にも対応

 ほかに、外国語の発音練習機能を搭載する。旅行やビジネス・海外出張、公共施設、インバウンドサービスなど、ユーザーの利用シーンに応じて練習ができ、発音の採点もしてくれる。

 通信は2年間のグローバル通信(98カ国対応)がついている。2年後のプランは現在、検討中だという。通信方式はeSIM、SIM、Wi-Fi、mobile hotspot、Bluetoothの5種類。主なスペックは、OSがAndroid 7.0、ROMが32GB、RAMが3GB、重さが120グラム。サイズは145.5×52.5×13.4ミリ。税別価格は2万8800円。

 現在は、翻訳機にとって厳しい市場だが、新型コロナが収束して東京五輪開催のメドがたってきたら必ず市場は回復するだろう。

 あるいは、テレワークなどの普及で、遠く離れた人とコミュニケーションがとれることに人々が気付き始めている。新型コロナによって、世界の人々とのコミュニケーションがなくなるわけではない。むしろ、ニューノーマルな日常を歩む中で翻訳機の活躍は、これからが本番かもしれない。iFLYTEKを日本のユーザーがどう評価するかも、まだはじまったばかりだ。(BCN・細田 立圭志)