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新型コロナに感染しないVHH抗体の取得に成功、北里大と花王など

時事ネタ

2020/05/09 08:00

 北里大学大村智記念研究所ウイルス感染制御学I研究室片山和彦教授らと、Epsilon Molecular Engineering(EME)、花王安全性科学研究所の研究グループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して感染抑制能(中和能)を有するVHH抗体の取得に成功した。

VHH抗体によるコロナウイルスの感染制御

 現在、世界各地で新型コロナウイルス感染症が大きな課題となっている。手洗いの徹底やマスクの着用など、感染拡大防止に向けた取り組みが数多く行われている一方で、新型コロナウイルスに対する治療薬は未だ存在せず、一刻も早い治療薬の開発が望まれている。

 また、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるために、感染の有無を調べる検査に関して検査体制の整備が進められているものの、十分な検査が実施されているとはいえず、迅速・簡便、確実な検査法の開発が望まれている。

 これら課題を解決する手段の一つとして、新型コロナウイルスと特異的に結合する抗体が待ち望まれている。抗体は、体内に侵入した異物(抗原)に対する免疫に関わり、特定の抗原と結合する能力を持っている。この能力を利用することで、さまざまなウイルスの感染抑制や特異的検出が可能となり、治療薬や検査薬に利用されている。そこで今回、北里大学とEME、花王は協力し、新型コロナウイルスに結合するVHH抗体の作製に取り組んだ。

 具体的な研究成果として、花王では、EMEが有するハイスループットVHH抗体スクリーニングを可能とするcDNAディスプレイ技術の提供を受け、ヒト培養細胞で発現させた新型コロナウイルスのS1タンパク質を標的分子に用いたスクリーニングを実施し、候補となるVHH抗体の配列情報を取得した。

 また、長年の研究開発で培ったバイオ生産技術を活用することで、候補VHH抗体の配列情報から得られた候補遺伝子の人工合成を行い、微生物によるVHH抗体生産を行った。作製したVHH抗体の標的分子に対する結合能を評価したところ、VHH抗体が標的分子と結合することが確認できた。

 北里大学大村智記念研究所ウイルス感染制御学I研究室では、いち早く開発したSARS-CoV-2に対する薬剤の不活化効果を評価する技術を用い、花王が提供した候補VHH抗体の新型コロナウイルス粒子への結合と、中和活性の有無を確認することで感染抑制能を評価した。

 その結果、VHH抗体を添加した場合に新型コロナウイルスの細胞への感染が抑制されていることが確認できた。このことから、取得したVHH抗体は新型コロナウイルスに結合するだけでなく、感染抑制能を有することが明らかとなった。

 今回の研究では、新型コロナウイルスに対して結合することで感染能の抑制が期待できるVHH抗体の取得に成功した。この成果は、新型コロナウイルスの治療薬や検査薬の開発につながることが期待できる。今後、今回の成果を世界中で活用できる方法について検討し、発信していく方針。