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「通勤時間ゼロ」「キッチンでテレワーク」 大手マンションデベロッパーの新提案

時事ネタ

2022/06/16 17:30

 東京都が発表した都内企業(従業員30人以上)の2022年5月のテレワーク実施状況調査によると、実施率は56.7%だった。4月に実施した前回調査に比べて4.6ポイント増加したが、前年5月の調査(64.8%)に比べると大きく低下しており、「オフィス回帰」を示唆する結果となった。しかし、テレワークや東京都が「テレハーフ」と呼ぶラッシュ時間帯を避けて出社する時差通勤は、通勤ラッシュの緩和(鉄道事業者の設備投資の負担軽減)や仕事と通院・育児・介護などの両立に役立つため、制度の整備とともに、今後ますます普及するともみられている。

都内企業(従業員30人以上)のテレワーク実施率(東京都調べ)

「通勤ゼロ」の賃貸マンション

 マンションデベロッパー大手7社の一つ、三菱地所レジデンスは、1階に居住者が24時間無料で利用できるコワーキングスペースを併設した職住一体型賃貸マンションシリーズ「The Parkhabio(ザ・パークハビオ) SOHO」を発表。6月に第1弾となる「The Parkhabio SOHO 大手町」が竣工した。The Parkhabio SOHOシリーズは、東京都内を中心に、今後3年間で5棟を供給する予定。
 
コワーキングスペースを併設したThe Parkhabio SOHOシリーズ第1弾の
「The Parkhabio SOHO 大手町」

 高品質賃貸マンションThe Parkhabio SOHOシリーズは、職住一体型による「通勤時間ゼロ」という新たなライフスタイルを提案する。主に1階に設置するコワーキングスペース「Style Lounge(スタイルラウンジ)」は、居室に置けないオフィスチェアやモニターを完備。打ち合せが可能なモニター・テレビ会議用カメラ付き会議室も備え、いわゆるシェアオフィスとして使える。
 
二層吹き抜け・約60m2の広さの「The Parkhabio SOHO 大手町」のコワーキングスペース

 アーリーステージのスタートアップ企業を支援するため、コワーキングスペースは建築基準法上事務所用途とし、法人登記も可能となっている。つまり、都内の企業に勤務しながらコワーキングスペースで起業の準備を進め、住居と事務所の二重賃料の負担を回避して起業するといった活用が可能だ。

 The Parkhabio SOHO 大手町の所在地は東京都千代田区内神田1丁目15番16号。アクセスは東京メトロ「淡路町」駅 徒歩5分、JR「神田」駅 徒歩6分、東京メトロ・都営地下鉄「大手町」駅 徒歩7分など。斬新な「職住一体型」は20年4月に施行された「内神田一丁目周辺地区都市再生駐車施設配置計画(これまで各建物単位に課せられていた付帯義務駐車場の規定を区域単位にて調整可能とする計画)」の施行によって実現した。

 この物件は賃貸専用だが、20年春以降に販売を開始した一部の新築分譲マンションでは、共用施設として無料(一部有料)の住民専用シェアオフィスやテレワーク可のライブラリーコーナーを設置し、アピールポイントとして打ち出している。

キッチンで仕事ができるコンパクトマンション

 一方、野村不動産は、暮らし心地にこだわった独自の商品開発「LUXMORE(ラクモア)」の新たな商品として新型キッチン「スタイリングキューブ」を開発し、神奈川県川崎市の2物件、「プラウド溝の口イースト」「プラウド新丸子」で導入する。
 
新型キッチン「スタリングキューブ」のイメージ

 スタイリングキューブは、専有面積30~50m2のコンパクトマンションの限られた空間を有効活用するため、通常約70cm程度のキッチンカウンターの奥行を100cm以上に広げ、料理をする場所としてだけではなく食事や仕事、趣味を楽しむテーブルとして多様な用途を想定して開発した。要するに、キッチンのカウンターにコンパクトなノートPCを置き、いつでもデスクワークができるようにした。一般的なPCデスクやダイニングテーブルより狭いが、週1、2日程度のテレワークや短時間の作業なら十分だろう。
 
「プラウド溝の口イースト」のモデルルームの写真。
リビング・ダイニングとの一体感によってキッチン周りが開放感のある空間となる

 この野村不動産独自の新型キッチンは、都心でも比較的手が届きやすい価格帯となるコンパクトマンションの不満や要望である「ダイニングテーブルを置くと好きなソファーが置けない」「趣味を楽しむスペースが家の中にない」「もっと空間を有効的に使いたい」といった不満を解決するための提案だ。

 プラウド溝の口イーストの所在地は神奈川県川崎市高津区久本三丁目87番4(地番)。アクセスは東急電鉄田園都市線「溝の口」駅 徒歩8分、JR南武線「武蔵溝ノ口」駅 徒歩7分など。竣工は23年1月下旬、入居時期は23年4月予定。

 今回の2物件は立地も仕様も異なるが、コロナ禍と建築資材の高騰などを受け、便利な都心住まいに、さらなるプラスαの機能性・利便性をもたせる工夫が感じられる。特に野村不動産の新型キッチンは、部屋を少しでも広く使うため自宅でも取り入れたいと思う人も多いかもしれない。そうなると、リビング(居間)とダイニング、キッチンを三つに分け、「リビングにテレビ」という考え方も変わりそうだ。(BCN・嵯峨野 芙美)