リコーが12月上旬に発売予定の<a href="http://bcnranking.jp/item/0008/4961311854392.html">「GXR」</a>。レンズと撮像素子、画像処理エンジンが一体となった「カメラユニット」を交換することで、さまざまな撮影に対応する極めてユニークな「ユニット交換式デジタルカメラ」だ。今回、ごく短期間ではあったが、発売に先駆けてその試作機をお借りすることができたので、そのファーストインプレッションと、期待の単焦点レンズ<a href="http://bcnranking.jp/item/0108/4961311854194.html
">「GR LENS A12 50mm F2.5 Macro」</a>の描写について語ってみたい。なお、記事中の使用感や掲載した実写画像に関しては、試作機のため製品版と仕上がりが異なる場合がある。

リコー「GXR」(RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4VC装着)


写真で見るとイマイチ? でも手にしてみると……



 実は、「GXR」を手にするのは今回が初めて。事情があって11月10日の発表会(詳細はこちら→リコー、近藤社長の本気デジカメ登場、レンズ交換式「GXR」発売へ)には参加できず、また、すでに実機展示が行われている銀座4丁目の「RING CUBE」にもまだ足を運べていなかったのである。

 そんなわけで、写真で見る限りの「GXR」に対しては、正直あまり良い第一印象を抱けなかった。ユニット交換式のメリットがどれだけあるのか疑問だったのと、カメラユニットを取り外した状態のボディ、いわゆる「カメラ本体」がどうにもカッコ悪く見えてしまったからだ。

GXRの本体部分。画面左億のコネクタでカメラユニット(レンズ部分)と接続する
取り付けた状態でガタツキがないようガイドレールも工夫されている

 今年の7月27日に「GR DIGITAL III」の発表会が行われた際、記者団から「APS-Cサイズなど大型の撮像素子を搭載する予定はないのか」「レンズ交換式にすることは考えていないのか」といった質問があったが、リコーの湯浅一弘・パーソナルマルチメディアカンパニープレジデントは、肯定こそしなかったものの、明確に否定もしなかった。

「GR LENS A12 50mm F2.5 MACRO」の背面とコネクタ部分
交換レンズというより、まさしく交換ユニットだ

 そこから、「リコーが近々、1/1.7型よりも大きな撮像素子で、レンズ交換式のデジタルカメラを発表するのではないか」という憶測が流れていたのである。しかし、フタを開けてみると、「レンズ交換式」ではなく、レンズも撮像素子も(そして画像処理エンジンまでも)一緒に交換してしまう「ユニット交換式」だった。これには本当に驚いた。

高級感・信頼感・剛性感 どれも想像以上のできばえ



 さて、実際に「GXR」を手にしてみて、自分の第一印象は大きな間違いだったと痛感した。本体はもちろん、カメラユニットのほうも外装にはマグネシウム合金を採用し、見た目も手触りも高級感と信頼感にあふれている。本体にカメラユニットを装着したときの一体感も抜群で、変な話、ユニットごと交換できるとは思えないほど、一つのカメラとしてしっかりまとまっている。

シャッターボタンまわり
やはりGR DIGITAL/GXシリーズと似ており、操作の統一感が保たれている

 ボディ形状やグリップ部分の処理、ボタン類の配置や操作性、メニュー構成などには、多くのファンに支持され、写真界ですでに一定の評価を確立している同社の「GR DIGITAL」シリーズや「GX200」で培ったノウハウを存分に生かしている。リコーの「G」ユーザーであれば、まったく違和感なく使えるだろうし、新製品でありながらすでに熟成された感があって、使い心地はとてもすばらしい。

92万ドットで見やすい液晶画まわり
操作性はGR DIGITAL/GXシリーズと似ている

 標準ズームレンズ搭載のカメラユニット「RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4VC」を装着した状態では、写真で見るよりもずいぶんコンパクトで、「GR DIGITAL III」と比べて圧倒的に大きい、というようなことは決してない。本体+カメラユニットの厚みは、最近人気のパナソニックやオリンパスのマイクロフォーサーズ機よりも薄く感じられ、ふだん使いのカバンに入れたときの納まり具合もなかなか良い感じだ。

液晶ビューファインダー VF-2を、少しチルトさせてみた
液晶画面側の出っ張りが少し気になる
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 ただし、オプションの「液晶ビューファインダー VF-2」を装着すると、少し事情は違ってきて、けっこう場所を取られてしまう。カバンからの取り出しもややもたつくので、「パッと取り出して、サッと撮る」という撮影スタイル重視なら、ビューファインダーは使わないほうが速く動けるかもしれない。一方、被写体をじっくり狙うスタイルで撮影に没入したいなら、「VF-2」はとても有効だ。約92万ドット相当と高精細で明るく、適度なコントラストがあって、映像の反応も速い。長時間使っていても眼が疲れにくい、良くできた液晶ビューファインダーだと思う。

 「GX200」のオプションとして用意されている「液晶ビューファインダー VF-1」や、パナソニックの「LUMIX DMC-GF1」用のライブビューファインダーなどは、いずれも約20万ドット相当なので、「GXR」のビューファインダーのほうがはるかに解像度が高い。なお、コネクタ部分のサイズの違いから、VF-2を「GX200」に装着することはできない。「GX200」ユーザーの知人はとても悔しがっていた。

ユニット装着時の一体感も抜群! ただし取り付けにはコツが…



 肝心の本体へのカメラユニットの脱着だが、取り付けた状態ではしっかり一体感があるのに、取り外しはレバー操作だけと実に簡単。「これでよくあれだけの密着をキープして、カメラユニットを支え続けられるな」と感心させられる。ものすごく存在を主張するような凹凸が設けられているわけではないのだが、カメラユニットが微動だにしない設計はすばらしい。

 しかし、カメラユニットを装着する際には少々コツを要する。本体とカメラユニットを平行に保ちつつ、本体の取り付け位置ガイドにきちんと合わせてからカメラユニットをスライドさせないと、正しく装着できないのだ。慌てて取り付けようとして、斜めからカメラユニットをはめ込もうとすると、ガイドレールに引っかかって、カメラユニットが正しく装着されないままで固定されてしまう。


 斜めに引っかかった状態のカメラユニットは、取り外しレバーの操作で無事に取り外すことができるが、何度も繰り返しているとガイドレールや端子部分が傷つきそうでこわい。慣れの問題が大きいとは思うが、「ユニット交換式」は、フィールドで素速くレンズを換えて撮影を続行できる「レンズ交換式」に比べると、交換にやや手間取るように感じられた。

標準ズームユニットは手ブレ補正搭載で十分コンパクト



 「RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4VC」は、CCDシフト方式の手ぶれ補正機構を搭載した「GXR」の常用標準ズームレンズを備えるカメラユニットだ。実際の焦点距離は5.1-15.3mmだが、35mmフィルムカメラ換算で広角24mmから中望遠72mmまでをカバーする。レンズは沈胴式で、収納時はかなりコンパクトになる。

「RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4VC」を取り付けた状態
レンズキャップにはオプションの「LC-2」を使っている

 製品名の焦点距離が35mmフィルムカメラ換算の焦点距離で表記されているのは、撮像素子の大きさがユニットごとに異なるGXRのシステムでは、実際の焦点距離を表記しても画角がわかりにくいためだ。

 撮像素子は1/1.7型CCD。同じ大きさの素子をもつ「GR DIGITAL III」が実現していた高い描画性能を考えると、高感度での描写もかなり期待できるはずだ。お借りしたユニットはあくまで試作機ということで、ただちに評価はできないが、それでも高感度画質はかなり優秀だった。ISO800までは安心して使える感じだし、ISO1600もそれとわかって使うぶんには、十分使用に耐えうると思う。

左から、GX200、GXR、GR DIGITAL III
カメラのテイストは統一感があり、グリップの感触もそっくりだ
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 このユニットには、オプションで「自動開閉式レンズキャップ LC-2」が用意されている。「GX200」で好評の自動開閉式レンズキャップが、デザインをブラッシュアップして、よりスタイリッシュな雰囲気になった。このユニットを使うなら、レンズキャップは迷わず「LC-2」に交換すべきだ。撮影のたびにキャップを脱着する必要がないのは、すこぶる楽。ただし、他のユニットには使えないので、ユニットを交換したら、レンズキャップの脱着を忘れないように気をつけないといけない。なお、フィルター径の関係で、「LC-2」も「GX200」には装着できない。

HD動画が撮れる50mm単焦点レンズはやや大きめの印象



 「GXR」と同時リリースとなるもう一つのカメラユニットが、「GR LENS A12 50mm F2.5 MACRO」だ。リコー初となるAPS-Cサイズ(23.6×15.7mm)、有効約1230万画素のCMOSセンサーを搭載する。「GR LENS」の名称は、とくに画質にこだわった高性能レンズに冠される製品名で、画像処理エンジンにも、「GR DIGITAL III」と同じ「GR ENGINE III」が採用されている。

「GR LENS A12 50mm F2.5 MACRO」を取り付けた状態
レンズの存在感が大きく、全く別のカメラに見える

 焦点距離50mmの単焦点レンズは、人間の眼とほぼ同じ画角で、自然な描写が得られる。しかも、このレンズは、最大撮影倍率1/2倍のマクロ撮影が可能だ。クローズアップでギリギリまでピントを追い込めるように、マニュアルフォーカス(MF)用のフォーカスリングも備えている。残念ながら手ブレ補正機能は搭載していないが、「24-72mm F2.5-4.4VC」では不可能なHD動画撮影(1280×720ピクセル、アスペクト比16:9、フレームレート24コマ/秒)に対応している。マクロもHD動画もOKの高画質で明るい単焦点標準レンズなのである。

 ただ、「GXR」に装着すると正直かなり大きい。けっこうコンパクトだと思っていた「GXR」が、たちまち一眼デジタルカメラ並みの大きさに感じられてしまう。もちろん、一眼デジタルカメラのマクロレンズに比べれば、十分にコンパクトではあるのだが。

 また、これが「ユニット交換式」のユニークなところだと思われるが、装着するカメラユニットによって、本体側の機能が変化するのである。例えば、「24-72mm F2.5-4.4VC」を装着すると、メニューの中に「手ブレ補正」の項目が現れ、「拡大・サムネイル表示ボタン」がズームレバーとして機能する。一方、「50mm F2.5 MACRO」を装着すると「手ブレ補正」の項目がメニューから消えて、「拡大・サムネイル表示ボタン」は機能しない(設定でデジタルズームに割り当てることもできる)。

 「レンズ交換式」では、装着するレンズによって本体のボタン機能が変化することはまずないが、「ユニット交換式」では、本体のボタン機能も変わることがありうる、というわけだ。今後カメラユニットが増えていったときに、操作に混乱するようなことにならないか、ちょっと気になってしまった。

50mmの描写はすばらしいの一語! しかしAFの合焦に難あり



 気になる「50mm F2.5 MACRO」の描写については、試作機だとしても、すばらしいの一語。絞り開放から解像力が高く、画面周辺までよく結像している。ヌケが良く、発色はやわらかい印象なので、ポートレートレンズとしても最適だろう。マクロレンズとしての描写力もすばらしく、一眼レフのレンズにもまったく引けを取らないと感じた。このあたりのレンズづくりの巧さは、さすがはリコー、「GR LENS」の名を冠するだけのことはある。

【GXRで撮影】 絞り優先AE・F2.5・+0.5EV・1/15秒・ISO200
[画像をクリックすると原寸大の写真を表示します]

【GR DIGITAL IIIで撮影】 絞り優先AE・F2.5・+0.5EV・1/34秒・ISO200
[画像をクリックすると原寸大の写真を表示します]
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 ただし、AFがどうにもままならない。製品版では改善されていると思いたいが、少なくとも試用した「50mm F2.5 MACRO」では、とくにマクロ撮影時、とにかくAFが合焦しない。レンズが最短から最遠まで行ったり来たりする間に、確実に合焦位置を通過しているのだが、そこをまったく無視して、まるでピントが合っていないのに合焦マークが点灯するのには、少々うんざりしてしまった。結局、MFに切り替えて、液晶モニタを拡大表示してピント合わせをすることがほとんどだった。どうやら、マクロ時のAFは、十分に光量のある環境下で、かつ被写体のピントを合わせたい位置の明暗差・コントラスト差がかなり大きい場合でないと有効に機能しないようである。

絞り優先AE・F2.5・1/64秒・ISO200
[画像をクリックすると原寸大の写真を表示します]

 また、マクロ撮影時はAFフレーム枠がやや大きく表示されるのだが、そのAFフレーム枠の中心で測距するのではなく、枠内でコントラスト比の高いところを検出するような傾向がみられた。マクロ撮影では、極めて厳密にピント位置を絞り込みたい場合が多いと思われるが、カメラ任せにすると被写体によって、AFフレーム枠の上側だったり、下側だったりにピントが合ってしまうことがあるようだ。レンズ描写は文句なしにすばらしいのに、AFはどうにも納得できないレベルと言わざるを得ない。

絞り優先AE・F2.5・-0.5EV・1/36秒・ISO400
[画像をクリックすると原寸大の写真を表示します]

 通常の撮影や絞り込んで撮る風景撮影などでは、それほどストレスは感じないが、このユニットの売りであるマクロ撮影やポートレート撮影では、このAFの遅さ、迷い方は致命的ではないかと思えてしまう。これが、「ユニット交換式」による弊害なのかどうか、非常に気になるところだ。

絞り優先AE・F5.6・1/48秒・ISO200
[画像をクリックすると原寸大の写真を表示します]

可能性はまだ未知数 今後の製品展開に大いに期待



 レンズを交換するのではなく、レンズと撮像素子をまとめて交換してしまうというデジタルカメラは、かつてミノルタからも発売されたことがあるが、残念ながら長続きはしなかった。

 「GXR」はまだ発売前ということもあり、その評価は発売後に本格的に議論されることになるだろう。レンズごとに最適化した専用の撮像素子と画像処理エンジンを組み合わせるという「ユニット交換式」は、高画質とコンパクト化を両立する大きな可能性を秘めているのは間違いないだろう。今後、どのようなカメラユニットが登場してくるか、また、本体のアップデートがどのように行われていくのか、大いに注目していきたい。(フリーカメラマン・榎木秋彦)

→次ページ:絞り値別・ISO感度別画像の比較

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「GR LENS A12 50mm F2.5 MACRO」での絞り値別画像比較



 「GXR」で、絞り値の変化による描写の違いを確認してみた。

【F2.5】 絞り優先AE・1/68秒・ISO200
[画像をクリックすると原寸大の写真を表示します]

【F2.8】 絞り優先AE・1/55秒・ISO200
[画像をクリックすると原寸大の写真を表示します]

【F4.0】 絞り優先AE・1/30秒・ISO200
[画像をクリックすると原寸大の写真を表示します]

【F5.6】 絞り優先AE・1/16秒・ISO200
[画像をクリックすると原寸大の写真を表示します]

【F8.0】 絞り優先AE・1/9秒・ISO200
[画像をクリックすると原寸大の写真を表示します]

【F11】 絞り優先AE・1/4秒・ISO200
[画像をクリックすると原寸大の写真を表示します]

「GR LENS A12 50mm F2.5 MACRO」でのISO感度別画像比較



 ISO感度の変化による描写の違いも確認。ISO1600になると暗部にノイズが増え、背景の木々の葉も荒れてくるが、ぎりぎり許容範囲内ではないだろうか。

【ISO200】 絞り優先AE・F8.0・1/16秒
[画像をクリックすると原寸大の写真を表示します]

【ISO400】 絞り優先AE・F8.0・1/34秒
[画像をクリックすると原寸大の写真を表示します]

【ISO800】 絞り優先AE・F8.0・1/68秒
[画像をクリックすると原寸大の写真を表示します]

【ISO1600】 絞り優先AE・F8.0・1/143秒
[画像をクリックすると原寸大の写真を表示します]

【ISO3200】 絞り優先AE・F8.0・1/290秒
[画像をクリックすると原寸大の写真を表示します]