高画質・高性能なデジタル一眼レフカメラは、大きく、重くて、高くてなかなか手が出ない……。そんな思い込みをみごとに裏切ってくれる名機が、6月27日に登場した。ペンタックスの「K-7」だ。その小さなボディには、驚くべき高性能が「これでもか」と詰め込まれていた。撮るほどに手に馴染み、撮影が楽しくなってくるカメラ「K-7」。試用して感じた率直な印象をまとめた。

小さく軽く価格も中級機並み、しかし視野率約100%は立派



 「*ist D」シリーズでスタートしたペンタックスのデジタル一眼レフカメラはその後、「Kシリーズ」に引き継がれた。現在販売されているのは、若いママを意識して“小さく・簡単・きれい”を追究した「K-m」と、小型ながらもハイスペックを実現させた「K-7」の2つの機種に絞られている。

ペンタックス「K-7」作例

試用したペンタックス「K-7」と4本のレンズ。レンズは左から、「DA★55mm F1.4 SDM」「DA15mm F4ED AL Limited」「DA★50-135mm F2.8ED [IF]SDM」「DA18-55mm F3.5-5.6AL WR」(K-7本体に装着)

 ペンタックスのデジタル一眼の頂点に君臨する「K-7」は、豊富な機能が特徴だ。撮像素子には有効約1460万画素のCMOSを採用。撮像素子シフト式の手ブレ補正機能を搭載し、シャッター速度換算で最大約4段分の効果を発揮する。さらに、超音波振動で撮像素子に付いたゴミをふるい落とす「ダストリムーバブルII」も搭載。視野率約100%の新設計光学ファインダーもウリだ。(関連記事:HOYA、小型ボディに高い堅牢性を備えるデジタル一眼、動画撮影にも対応

 設定可能なISO感度はISO100~3200(カスタム設定で最高ISO6400まで)、最高で毎秒約5.2コマの連写が可能。さらに1280×720ピクセルのHD動画を30fpsで撮影できる機能も備えている。動画撮影中もAEによる露出制御と手ブレ補正機能が作動する。背面の液晶モニタは3.0型・約92万ドットと大型で高精細。記録媒体にはSD、SDHCカードを使用する。デジタル時代になって、シビアになった「水平」出しを自動的に行う「自動水平補正機能」もユニークな機能だ。

ペンタックス「K-7」作例

多彩なモードダイヤル。「Sv」は「感度優先モード」。ISO感度に合わせシャッター速度と絞り値が自動的に変化。「TAv」は「シャッター&絞り優先モード」。シャッター速度と絞り値に合わせISO感度が自動的に変化

 「K-7」の重さは、ボディのみで約670g。ニコンの「D90」が約620g、キヤノンの「EOS 50D」が約730gだから、「K-7」は他社の中級機に近い重さだ。しかし「K-7」は、一眼レフカメラにおける“最高級機の証”ともいえる「ファインダー視野率約100%」を達成している。このことからも、そうしたカメラよりワンランク上の製品ということができる。

 「ファインダー視野率約100%」というのは、ファインダーで見たまま、ほぼそのとおりの範囲でそのまま撮れる、ということだ。「なんだそれだけのこと」と思う人がいるかもしれないが、これを達成するには極めて高度な光学設計の技術が必要になってくる。

 最近のデジタル一眼なら、ライブビューを使えば、視野率はほぼ100%で撮影できる。コンパクトデジカメも同じだ。問題は、光学ファインダーを覗いた場合に、そのままの範囲が撮影できるかどうかだ。現在は、プロ向けかハイアマチュア向けのわずかな高級機でしか視野率100%は実現していない。

 つまり、ほとんどのデジタル一眼は、ファインダー視野率が100%に満たない。そのため、しっかりと構図を決め、フレーミングは「完璧!」と思ってシャッターを切っても、ファインダーでは見えていなかった部分にあった余分なものが写り込んでいる、ということが起こってしまう。まあ撮影後にトリミングすればすむ問題だ。しかし、シャッターを切る瞬間に自分が見た世界と、撮れた写真が完全に一致しているというのは、やはり重要なことだと思うのだ。

 ファインダー視野率100%を達成するには、製造時の組み付け精度も要求される。当然コストもかかるので、高額な最高級機にしか搭載されてこなかった。しかし、「K-7」は、レンズキットで13万円前後と安価ながら実現してしまったのである。これは快挙と言うほかない。
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潮まみれでも大丈夫! さすがの防塵・防滴構造



 さて、そのファインダーの見え具合なのだが、最初、レンズキットとして付属する「DA18-55mm F3.5-5.6AL WR」を装着して試用したときには、ごくごく平凡で、他社の入門機クラスよりは多少良いかな、と感じる程度だった。ところが、F2.8クラスのレンズを装着すると、すばらしさが実感できた。エッジが切れて、ピントの芯が浮き上がってくる感じだ。マニュアルでのピント合わせもすごくやりやすい。「K-7」が搭載する「ナチュラルブライトマットIII」フォーカシングスクリーンは、開放F値の明るいレンズほど、その真価を発揮するようだ。

K-7レンズキット

「K-7レンズキット」。付属するレンズ「DA18-55mm F3.5-5.6AL WR」は、簡易防滴構造になっている

 とはいえ、「DA18-55mm F3.5-5.6AL WR」が「イマイチなレンズ」というわけでは決してない。焦点距離27.5mmから84.5mm相当(35ミリ判換算、以下同)までをカバーする標準ズームレンズとして、使い勝手の良いサイズで、十分な描写力を達成している。何よりスゴイのは、簡易防滴構造が施されていること。「K-7」本体、さらに専用バッテリーグリップ「D-BG4」は防塵・防滴構造になっているので、キットレンズと組み合わせると、少々の雨や水しぶきなど気にせずに使えるタフなカメラになる。

 実際、試用で持ち出した海岸はけっこう潮風がきつく、レンズにも水滴が付いてしまうほどの状態だったが、まったく何のトラブルもなく、最後まで快調に撮影が続けられた。かつて、フィルムの一眼レフカメラ「LX」で、世界で初めて防塵・防滴構造を実現させたペンタックスの技術は、さすがだ。過酷な自然の中での撮影を仕事にするフィールドカメラマンが、ペンタックスを支持する理由の一端を垣間見た気がした。

ペンタックス「K-7」作例

18-55mm F3.5-5.6の作例 Avモード・F8・1/60・ISO100・AWB・27mm相当


ペンタックス「K-7」作例

18-55mm F3.5-5.6の作例 Avモード・F8・1/160・ISO200・AWB・72mm相当
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明るいレンズとLimitedレンズが相性ぴったり



 今回は、キットレンズの「DA18-55mm F3.5-5.6AL WR」のほかに、望遠ズームレンズの「DA★50-135mm F2.8ED [IF]SDM」(76.5~207mm相当)と、「DA15mm F4ED AL Limited」(23mm相当)と「DA★55mm F1.4 SDM」(84.5mm相当)の2本の単焦点レンズも併せて試用した。

 ペンタックスのレンズで「DA」と付くものは、デジタル専用に設計されたレンズで、その中でも「★」マークが付くのは、より高画質を追求した大口径で明るい高性能レンズ。このほか、AFファイルカメラ用の「FA」シリーズ、MFフィルムカメラ用の「F」シリーズ(どちらもデジタルでも使用可能)のレンズラインアップがある。また「Limited」が付くレンズは、よりシャープでクリアな画質を実現し、鏡胴はアルミ削り出しという高級レンズだ。

K-7

コンパクトなボディに似合う「DA15mm F4ED AL Limited」を装着した「K-7」

 試用したレンズのうち、「DA★50-135mm F2.8」と「DA★55mm F1.4」は、超音波モーター内蔵でAFが速く、ピント合わせにはまったくストレスを感じなかった。大口径の明るいレンズなので、ピントの山がとてもつかみやすい。背景のやわらかなボケと、ピントが合ったところのシャープさは、ファインダーを覗いていて惚れ惚れするほどだ。とくに「DA★50-135mm F2.8」はすばらしかった。人物撮影の際などでも、背景の中から狙った被写体が浮き上がってくるような写真をモノにすることができるだろう。

 もっとも、4本のレンズのうち、「K-7」に装着したときにどれが一番似合うか? と問われれば、間違いなく「DA15mm F4」だと答える。コンパクトな「K-7」には、コンパクトなレンズがよく似合う。しかも、ペンタックスのデジタル一眼レフカメラで初めてマグネシウム合金をボディ外装に採用した「K-7」と、鏡胴部分がアルミ削り出しのLimitedレンズは、質感としてもベストマッチだ。

ペンタックス「K-7」作例

15mm F4/Avモード・F5.6・1/400・ISO100・AWB


ペンタックス「K-7」作例

15mm F4/Avモード・F5.6・1/499・ISO200・AWB
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撮像素子で画像の水平を調整する機能、これは画期的



 ところで、初めて「K-7」を手にして、メニューから各種設定などを確認しているときに感じたのは、「カメラというよりも、電子機器みたい」という印象だった。メニューからデジタル制御によって変更・設定できる項目がとても多く、メカニカルな光学機械としてのカメラといった感触よりも、電子部品の固まりのような印象を受けたのである。しかし、試用していくうちに、その印象は大きく変わっていった。

 「K-7」は、カメラの傾きをセンサーが自動的に検知して、撮像素子を動かすことで、画像の水平を保ってくれる「自動水平補正機能」を搭載している。自動補正が可能なのは、左右それぞれ1度(手ブレ補正がオンの場合。オフなら各2度)までの傾きだが、この効果はなかなか侮れない。筆者の場合、自分の目では「水平である」と認識して撮った写真が、右肩上がりに傾いていることがよくあるのだが、この「自動水平補正機能」をオンにしておくと、それがみごとに解消されて、ちゃんと水平に撮れる。

ペンタックス「K-7」作例

55mm F1.4/Avモード・F5.6・1/30・ISO200・WB晴天


ペンタックス「K-7」作例

55mm F1.4/Avモード・F5.6・1/13・ISO200・WB晴天
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 最初は、「撮影のクセを矯正する上ではマイナスなのでは」と、この機能に懐疑的だった。しかし何度も試しているうちに、「カメラに任せられることなら、任せてしまって良いかも」と思えるようになってきた。手持ち撮影で「水平」を保つには、微妙な調整加減が必要。とはいえ、水平に気をとられてシャッターチャンスを逸するのも本末転倒。それなら、「水平」はカメラに任せてシャッターチャンスに専念するほうがいいのではないか、と考えるようになった。

 撮像素子の傾きを任意に調整することができる「構図微調整機能」も、「K-7」は搭載している。こちらは、カメラを三脚に固定して撮影するときに便利な機能だ。「あと少しだけ、右下がりの構図にしたい」といったときに、いちいち三脚を調整しなおさなくても、撮像素子を動かすことで、構図を微調整することができる。

 ただし、「自動水平補正機能」も「構図微調整機能」も、調整できる角度には限りがあるので、あくまでも撮影をアシストしてくれる機能と考えておくべきだろう。手ブレ補正機能も同様だが、いい加減なカメラの構え方、撮り方では、いい写真は撮れない、ということは肝に銘じておきたい。

ペンタックス「K-7」の「構図微調整機能」

「構図微調整機能」を使ってみた。カメラを固定したまま左右の傾きを調整するなどの構図の微調整ができる

ダイナミックレンジを広げる2つの方法



 デジタルカメラの撮像素子は、フィルムに比べると白トビ・黒ツブレしやすい。これは、フィルムではハイライト側もシャドー側もなだらかに階調が失われていくのに対して、デジタルではある一定値を超えると突然階調が失われてしまうために起こる現象だ。カメラメーカー各社は、よりダイナミックレンジの広い撮像素子の開発と、画像処理技術を進歩させることで、白トビ・黒ツブレを抑える努力を積み重ねてきた。

 「K-7」でペンタックスは、もっとも明るいところから、もっとも暗いところまで、幅広く再現することができるデジタル写真を可能にするために、2つの方法を用意している。

ペンタックス「K-7」作例

50-135mm F2.8/Avモード・F4・1/1250・ISO200・AWB・184mm相当

 

ペンタックス「K-7」作例

50-135mm F2.8/Avモード・F7.1・1/1000・+0.7EV・ISO200・AWB・184mm相当
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 1つは「D-Range設定」で、これは、ハイライト補正とシャドー補正を別々に設定することができるもの。シャドー側はとくに補正せずに、白トビだけを抑えたい、といった使い方ができる。画像の記録形式がJPEG+RAWの場合でも設定できるが、効果が反映されるのはJPEG画像のみだ。
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 もう1つは、「HDR撮影」で、こちらは、シャッターを押すとカメラが自動的に、標準露出/アンダー/オーバーの3カットを連続撮影して、それらを合成することで1枚の写真として保存してくれるというもの。「D-Range設定」よりもダイナミックレンジの広い撮影が可能になるが、画像の記録形式がJPEGでなければ利用できない。ドライブモードなどにも制限があって、手ブレ補正も自動的にオフになってしまう。

 筆者の場合は、もっぱら「D-Range設定」を利用することが多かった。とくにハイライト補正は、オンにしているケースがほとんどだった。「D-Range設定」をオンにするとノイズが増える、などの悪影響はほとんど感じられなかったので、常時オンでも問題ないだろう。一方、「HDR撮影」のほうは、何かと制約があることもあって、ほとんど使えなかった。この機能は、三脚固定で撮影する風景写真向き、といえるかもしれない。

「デジタルフィルター」で撮った後にも楽しめる



 このほか、「K-7」では、デジタルならではの機能として、各種デジタルフィルターを使った撮影も楽しめる。あらかじめフィルター効果を設定して撮影することもできるが、むしろ筆者は、撮影後の写真に対して、フィルター効果を適用するほうがが楽しかった。中でも「トイカメラ」「ミニチュア」「レトロ」「水彩画」などは、独特の効果が現れてかなり面白い。

ペンタックス「K-7」作例



ペンタックス「K-7」作例

デジタルフィルターの「色抽出」の作例。青色だけを抽出してみた
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 こうした効果は、これまでなら画像編集ソフトを駆使して加工したり、専用カメラで撮影したりしなければ得られなかったもの。それが「K-7」だけで、カメラ内ですべてできてしまうようになったわけだ。

 こうしたデジタルフィルターだけでなく、通常の撮影においても、「K-7」は、画質に関わる設定を細かく設定を変更できるようになっている。ホワイトバランス・彩度・コントラスト・シャープネスなどをユーザーが好みに応じて調整できるデジタル一眼レフカメラは多いが、「K-7」ではさらに、色相、画像の明るさのキー、調色などのパラメータも細かく変更できるようになっている。

ペンタックス「K-7」作例

デジタルフィルター「ミニチュア」の作例。ベンチやパラソルの台座部分など、かなりミニチュアっぽく見える
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 初期設定のままで撮った「K-7」の写真は、素材感重視の素直な画質で、変に色づけされていない写真だという印象だ。筆者としては、割と好きなタイプの画質なのだが、人によっては、もっと個性的な画質を好ましいと思う場合もあるだろう。より鮮やかな記憶色に近づけたいとか、もっとフラットな光の雰囲気にしたいとか。そうした希望がある場合には、各種パラメータを細かく設定変更して、自分好みの画質に追い込んでいくことができる。必要に応じて、自分なりの好みにとことん仕立て上げることができるのも、「K-7」の大きな魅力なのである。これは、デジタルだからこそ可能な機能だ。

ペンタックス「K-7」作例

デジタルフィルター「トイフォト」の作例。おもちゃのカメラで撮ったような独特の味わいが出る
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小さくて高機能で、「手に馴染む」カメラ



 最後に、「K-7」を試用して気になった点を1つ。メニューで「レンズ補正」をオンにすると、撮影後の再生画像表示が著しく遅くなることだ。「レンズ補正」には、「ディストーション補正」と「倍率色収差補正」の2つがある。このうちとくに「倍率色収差補正」をオンにすると、撮影後に再生画像が表示されるまでにかなり待たされるようになってしまう。

 倍率色収差は、明るい背景に暗い被写体が重なったときなどに、被写体の周囲に青または紫の色ニジミが発生してしまう現象。他社のデジタル一眼レフカメラでは、「倍率色収差補正」はオン・オフの必要なく標準で適用されるものもあって、だからといって再生画像表示が遅くなることはない。

 「K-7」は、内部の画像処理で「レンズ補正」を適用するのに時間がかかっているものと思われるが、もしかするとバッファメモリの容量なども影響しているのかもしれない。他の機能が最高級機並みにすぐれているだけに、「レンズ補正」をオンにするだけで、撮影後の再生画像の表示がもたつくのは残念だ。ぜひ改良を望みたい点である。

ペンタックス「K-7」シャッターボタンまわり

シャッターボタンまわり。電源のオン・オフスイッチは、シャッターボタンと同軸にあり、右手人差し指1本で素速く操作できる。前電子ダイヤルは、斜め上向きにセットされていて、操作しやすいように工夫されている

 ともあれ、最初、「K-7」に対して感じていた「カメラというよりも、電子機器みたい」という印象は、いつの間にか「すばらしく手に馴染むカメラ」に変わっていった。ある程度使い込んでカスタム設定を通じて「自分に合うカメラ」に仕立て上げていくにつれ、そして、視野率約100%のファインダーを覗きながら何度もシャッターを切っていくにつれ、「手に馴染む」感覚は強くなった。

 気が付くと、紛れもない「カメラ」として、筆者の手の中に「K-7」があった。小さなボディに、デジタル一眼レフカメラの新機軸を切り拓いてくれそうな予感を詰め込んでいる「K-7」。それは、単に手にとって眺めるよりも、実際に野外へ連れ出して、使い続けていくほど、その良さを実感できるカメラである、というのが筆者の率直な印象だった。(フリー・カメラマン 榎木秋彦)