【記者のひとこと】どうなる自治体DX

コラム

2022/02/09 10:00

 昔、人口が2万人を下回る小さな町で仕事をしていました。有力な産業はなく、観光名所もありませんでしたが、周辺都市のベッドタウンとして宅地需要は根強く、町も教育や福祉に力を入れている姿勢をアピールしていました。小さな町とはいえ、自治体が手掛けるべき主要なサービスはどれも自前、もしくは周辺自治体との共同事業として提供しており、職員数削減の声も上がる中で、役場の職員は毎日忙しそうにしていた記憶があります。

 自治体DXに関する取材をしていて、ふと、その町のことを思い出しました。人も予算も潤沢とはいえない小さな町が、果たしてDXを実現できるのだろうか、そんな疑問が頭をよぎります。おそらく、同じような自治体は日本全国にあるのでしょう。国は2025年度までに情報システムの標準化・共通化の実現を掲げていますが、どこまで広がるかは不透明な状況だと感じています。

 さまざまなITベンダーが自治体DX支援ビジネスに本腰を入れています。国や大規模な都市だけでなく、市町村などの基礎自治体に対しても、積極的にDXを後押ししていく姿勢がみられ、頼もしい限りです。

 自治体DXの狙いは、一般的な企業のDXと同様に、デジタルテクノロジーを生かした組織変革にあるといえます。もちろん、職員数が減る中で1人当たりの業務量を減らすことは重要なことですが、その上で、新たな住民サービスを創造していくことが求められますし、それに適応した組織へ生まれ変わることも課題となります。自治体には目先の計画達成だけにこだわることなく、その先の姿を見据えてほしいと思います。そして、ITベンダーにも、単なる効率化、標準化などにとどまらない提案を期待したいところです。(藤岡 堯)

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商機取り込みへ加速するITベンダー 自治体DX支援ビジネスが本格化