【記者のひとこと】未来だけ見ないで

コラム

2021/09/29 10:00

 本紙創刊40周年記念特集も後半戦を迎えています。第5弾は将来の実用化が期待できる先端技術「エマージングテクノロジー」として、量子コンピューターとブロックチェーンを取り上げました。報道で耳にする機会も多く、さぞかし業界は盛り上がっているのだろうと鼻息荒く取材に臨んだのですが、結果は紙面の通り。割と業界内では慎重な意見も多いようでした。

 特に量子コンピューターに関していえば、ビジネスへの実用性は「ゼロ」との意見も。紙面では紹介できませんでしたが、ある量子コンピューター開発者は「シリコン」や「イオントラップ」など、現時点で主流となっている量子ビット技術のどれもが最終的には廃れ、まったくの新技術で量子コンピューターが完成される可能性もあると話していました。期待は大きく膨らんでいますが、実態はまだまだ道半ばな技術のようです。

 取材では、お祭りムードで手を出して痛い目を見た企業も散見されるとの指摘もありました。量子コンピューターは将来的に世界へ大きなインパクトを与える技術であることは間違いありません。ただ、夢あふれる未来を見ることも大切ですが、冷静に現実を見据えることも同じくらい重要です。これから量子ビジネスに乗り出したいと考えるのであれば、まずは落ち着いて市場環境を確認してみるところから始めてみてもいいかもしれません。(藤岡堯)

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週刊BCN 創刊40周年記念特集 いま注目すべきエマージングテクノロジー 事業の種を探し大きな波を待て