• ホーム
  • トレンド
  • そもそも国内通話料金って何? パンドラの箱を開けたKDDIの「povo」

そもそも国内通話料金って何? パンドラの箱を開けたKDDIの「povo」

オピニオン

2021/01/16 11:30

 1月13日にKDDIが発表したauのウェブ専用ブランド「povo」は、ネット通話アプリで十分という若いユーザー向けに、月500円の「5分以内かけ放題」を、基本料金の月20GBで2480円から切り離した。大手キャリアでありながら、自ら「5分以内かけ放題」をバンドルしないことで、「そもそも国内通話料金って何?」というユーザーが抱える古くて新しい疑問であるパンドラの箱を開けた形だ。KDDIはどこを目指すのか。

500円で750秒(12分30秒)しか話せない不思議

 オンライン会見でKDDIの高橋誠社長は、「通話はインターネット通話アプリで十分というお客様が非常に多い。(KDDIの)スマートフォン(スマホ)を使う20代以下のお客様のうち、通話時間が月10分未満の方は6割以上になっている」と、5分以内かけ放題を切り離すことで2480円の「最安値」を実現した背景を語った。

 最安値というのは、NTTドコモの「ahamo」やソフトバンクの「SoftBank on LINE」の月20GB、2980円よりも500円安いという意味においてだ。実際には、NTTドコモもソフトバンクも「5分以内の通話無料」が含まれるため、povoも5分以内かけ放題(月500円)の条件を合わせれば同じ2980円となる。
 
月額2480円に「5分以内かけ放題」は含まれない

 ただ、LINEやFacebookのメッセンジャーなどのネット通話アプリで十分という人にとって、5分以内かけ放題の料金が含まれない分だけ安くなるのは魅力的だろう。本当に国内通話が必要なときは、月500円で「トッピング」すれば、いつでも5分以内かけ放題が使えるため、心配もない。
 
国内通話が必要なときは、月500円で「トッピング」するという発想

 実際、新型コロナ対策でテレワークが広がったことで、ZoomやTeams、LINE、メッセンジャーなど、ネット通話アプリで通話や動画で会議をするのが日常的になった。そんな中、リモート会議をスマホの国内通話で行う人など皆無といっていいだろう。

 ちなみに、KDDIやNTTドコモ、ソフトバンクも、標準の国内通話料金は30秒ごとに20円の設定。500円で750秒(12分30秒)しか話せない。リモート会議などで使ったら、お金がいくらあっても足りない。たとえ、かけ放題を使ったとしても、5分以内にかけ直しながら会議するのも現実的ではない。つまり、現状の国内通話料金の設定自体が、リモートワークになじまない、かけ離れた体系になってしまったのだ。

 KDDIのpovoの月2480円プランでは、国内通話は30秒ごとに20円となる。くれぐれもスマホの国内通話を使わず、ネット通話アプリ専用にするように気を付けたい。povoはウェブでの契約が基本なので、ネットリテラシーの高い若いユーザーが使うと考えられるが、そうではないユーザーが契約して知らずに30秒20円で通話して、後から高額請求がきたというトラブルに陥らないかは、あらかじめ懸念されるところだ。

あらゆる機能を「トッピング」化するのか!?

 さて、5分以内かけ放題を基本プランから切り離したKDDIは、何を稼ぎ頭にするのか。それが、シーンに応じて使いたいときに支払うトッピングだ。トッピングの第一弾は、5分以内かけ放題と、「200円で24時間データ使い放題」の二つでスタートする。

 KDDIの高橋社長は会見で、povoの発表をした直後から、さまざまなパートナーからトッピングに参加したいという声やアイデアが寄せられていることを明かすなど、トッピングの反響は大きいようだ。
 
簡単に追加支払いできる「トッピング」

 あるスポーツの試合だけを見る、ある映画や2時間ドラマだけを見る、個人の好みや使い方に応じてクーポンがもらえるなど、すでに社内からもトッピングのアイデア出しで盛り上がっているという。

 当然ながらトッピングは、KDDIが経営戦略の重要テーマに掲げている、通信とライフデザインの融合も視野に入れているのだろう。平たくいってしまえば、トッピングの金融事業への拡大だ。
 
通信とライフデザインの融合

 具体的には、スマホ決済アプリのau PAYやPontaポイント、ECのau PAY マーケットのほか、auじぶん銀行、auアセットマネジメント、auカブコム証券などグループの金融サービスとの融合である。これらの多種多様なサービスが、細かくトッピングのメニューとして登場してくることは容易に想像がつく。

 今回、povoによる「5分以内かけ放題」の切り離しで開けられたパンドラの箱は、トッピングによる新しいサービスで稼ぐというKDDIの不退転の覚悟を示しているように思えてならない。(BCN・細田 立圭志)