「日本の大企業はイノベーションを生み出せていない」という批判に対する解決策として、「オープンイノベーション」が叫ばれるようになってはや数年。大企業の資金や営業力と、スタートアップ企業の技術やアイデアを組み合わせれば、革新的な製品・サービスを開発し、規模をもった形で展開できるというもくろみでしたが、必ずしもうまくいっているケースばかりではありません。主に大企業側にある問題点として、意思決定のスピード、リスクをとる姿勢、過去の成功体験から脱却する意思などが、不足していると指摘されています。

 富士通が先月、グループのAI事業を統括する新会社「FUJITSU Intelligence Technology」をカナダ・バンクーバーに設立しましたが、カナダを選んだ理由として、ITスタートアップが多数起業していることや、シリコンバレーまで国内出張感覚でアクセスできる地の利が挙げられていました。

 富士通ほどの大企業が、本当に北米のスタートアップ起業とうまくやっていけるのか、今後の動きをウォッチしていきたいと思いますが、新会社の吉澤尚子CEO(富士通常務)は「新会社設立を社内で提案したのは今年に入ってから。決定は非常に早かったと思う」と話し、巨大企業である富士通にしては素早い投資判断ができたと自己評価します。さらに「よりスピードが必要であればM&Aもしていくし、逆に外からの資本を受け入れる可能性も当然ある」と述べ、企業の形態自体も現在の形にとらわれることはないとしました。海外でのオープンイノベーションを成功させられるか、注目が集まります。(日高彰)

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