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デジカメは「一人1台」から「一家に1台」に逆戻り? ニーズに応えるカタチは一眼か

時事ネタ

2016/07/27 13:25

 家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」の過去10年間のデータによると、デジタルカメラ(デジカメ)の年間販売台数は、2010年をピークに減少に転じ、2015年は、2007年以降、最も少なかった。特に、レンズ一体型(コンパクトデジカメ)は落ち込みが激しく、2010年の約4割にとどまった。


 レンズ交換型(デジタル一眼カメラ)も、ここ1、2年は伸び悩み、2014年は微増、2015年は初めて前年を下回った。ただ、デジカメ全体に占める構成比は、過去最高の34.3%に達し、うち約4割は軽量・コンパクトなミラーレスタイプだった。販売台数は、およそ6.5対3.5の比率で、コンパクトのほうが多いが、単価が高いため、販売金額は2013年以降、デジタル一眼がコンパクトを上回っている。数年後には台数でも逆転し、カメラといえば、イベント時や記念撮影など、ここぞという時に使う「デジタル一眼」を指すようになるかもしれない。
 

デジカメはもはや「一家に1台」? 世代によって変わるデジカメの使用経験

 デジカメの販売台数が減少した最大の要因は、手軽に撮影できるスマートフォンの普及にあるといわれる。内閣府の調査によると、2人以上の一般世帯のデジカメ普及率は、2016年3月末時点で75.6%。100世帯あたりの保有台数は112台で、1台以上保有している家庭も多いと推測される。普及率は、販売のピークを過ぎた2013年3月末時点が最も高く(77.0%)、直近3年間はやや下落している。

 BCNに新卒で入社した20代前半の社員は、自分用のデジカメは持っておらず、両親など、誰かのカメラを借りて撮影した経験しかないと答えた。ふだんは、スマートフォンで撮影するという。数名に、同様の質問を投げかけると、年代によって回答が分かれ、初めて購入した年齢もマチマチだった。デジカメの使用経験・購入経験は、世代を映す鏡の一つとなっている。

10年で普及し切ったデジカメ 値下がりが止まると伸び悩む

 コンパクトデジカメの売れ行きは、2012年から2013年にかけて大きく落ち込んだ。iPhoneをはじめとするスマートフォンが本格的に普及した時期と、価格が上昇に転じた時期と重なる。液晶テレビ同様(詳しくは<10年間、進まなかった液晶テレビの大画面化 40型4K登場でついにシフト始まる?>を参照)、コンパクトデジタルカメラの底値は2012年。1万円以下のエントリーモデルが人気を集め、税別平均単価は1万5000円まで下がっていた。その後、国内メーカー各社がラインアップを絞り、高価格帯にシフトし始めたことで、単価の上昇が始まった。
 


 デジタル一眼も、全体の平均単価は2012年が最も低かったが、2010年から本格的に市場が立ち上がったミラーレス一眼と、従来のデジタル一眼レフについて、それぞれボディと交換用レンズがセットになったレンズキットに限って集計すると、ミラーレスのレンズキットは2013年が最も安く、デジタル一眼レフのレンズキットは2012年を底値に上昇に転じた。__RCMS_CONTENT_BOUNDARY__ 2015年の平均単価は、コンパクトデジカメが約2万1000円、ミラーレス一眼のレンズキットが約6万1000円、デジタル一眼レフのレンズキットが約8万5000円。集計を開始した2004年の時点では、平均単価はコンパクトデジカメでも約3万4000円、デジタル一眼に至っては15万円以上だったことを考えると、劇的に安くなった。
 


 2016年6月の上位20位までのランキングを見ると、1万円台のコンパクトデジカメに混じって、2位にデジタル一眼レフの「EOS Kiss X7」が入り、2万円超の高価格帯のコンパクトデジカメも数機種ランクインしている。依然として、売れ筋は低価格帯に偏っているが、機能や性能を重視して選ぶ傾向もうかがえる。
 

デジタル一眼に強いメーカーのシェアが上昇 上位5強に

 また、デジタル一眼に強いキヤノン、ニコンのシェアが、デジカメ全体でみても高まっている、というのも、この3年間での特徴的な動きだ。キヤノンは、2005年以降、デジカメ全体、コンパクト、デジタル一眼のすべてで、年間シェア1位を獲得。2012年に参入したミラーレス一眼でも、2014年、2015年は3位に食い込み、デジタル一眼カメラのシェア拡大を後押しした。

 2007年にデジタル一眼で1位を獲得したニコンは、翌年以降2位の座を保っている。コンパクトでも2014年、2015年は2位に浮上した。ただ、ミラーレス一眼は、上位3社との差は大きい。
 


 以降、2015年のデジカメ全体でのメーカー別ランキングは、コンパクトデジカメに強いソニーが3位、カシオが4位につけ、5位は、ミラーレス一眼ではトップシェアのオリンパスだった。上位5社のシェアの合計は、2013年以降、8割を超え、2016年に入っても同様の傾向が続いている。コンパクトデジカメは4強、デジタル一眼レフは2強、ミラーレス一眼は3強という状況。タイプごとにメーカーが固定しつつある。
 


左から、キヤノンのコンパクトデジカメ「IXY 180」、カシオのコンパクトデジカメ「EXILIM EX-ZS210」、キヤノンのデジタル一眼レフ「EOS Kiss X7」

変わるカメラに対するニーズ 主流になるのはミラーレスか、一眼レフか

 スマートフォンの普及は、コンパクトデジカメの売れ行きを直撃し、レンズの性能や動画の画質などでアドバンテージをもつデジタル一眼すら影響を受けつつある。4月に発生した熊本地震によるソニーのCMOSセンサー工場操業停止の影響もあり、上半期(1月~6月累計)のデジカメ全体の販売台数は、前年の9割弱にとどまった。特に、コンパクトは、スマートフォンとの差異化が難しく、サイズや予算の点で、ミラーレス一眼とも競合するため、ますます厳しくなるだろう。将来、カメラといえば、多くの人がレンズ交換が可能な「一眼」タイプをイメージするようになるかもしれない。
 


フィルムカメラを彷彿とさせるクラシカルなデザインのデジカメも発表されている(左から、富士フイルムのミラーレス一眼カメラ「X-T2」、オリンパスのミラーレス一眼カメラ「PEN F」、ニコンのコンパクトデジカメ「DLシリーズ」)

 同時に、最盛期には「一人1台」といわれていたカメラは、コレクションとして買い求めるカメラ愛好者を除き、「一家に1台」となり、今まで以上に、カメラでしかできないこと・表現できないことが求められる。撮影シーンが絵になるよう、他人の目を意識して選ぶ傾向も強まるはずだ。必然的に買い替えスパンは長くなり、市場規模は縮小する。その時、主流となるのは、ミラーレスか、一眼レフか。メーカーの動向を含め、今後、どのようなカメラが支持されるのか、注目していきたい。(BCN・嵯峨野 芙美)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベース(パソコンの場合)で、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。