【桃園発】台湾・台北から台湾新幹線で15分。工業地帯として知られる桃園にヘッドホン・イヤホンメーカー、オーディオテクニカ台湾の本社工場がある。決して大規模ではないものの、こだわりの製品をつくるシステムと高いスキルをもつ人材を確保。デジタルとアナログを融合した「匠の技」で、高品質の製品づくりを実現。現在は、台湾でのブランド確立を目指している。

オーディオテクニカ台湾本社
 

開発力の増強で売上高が成長



 オーディオテクニカ台湾の設立は1989年。当初の人員は9人で、主に日本で設計した製品の生産を行い、このビジネスモデルが05年まで続いた。しかし、多くの企業がコスト削減を目的として相次いで生産機能を中国に移しつつあるなか、「請け負うだけのビジネスでは生き残れないと判断した」と、オーディオテクニカ台湾の近藤和久社長は当時を振り返る。近藤氏は立て直しを目的に06年に台湾の社長に就任。そこで打ち立てた戦略が「開発力の強化」だった。開発から製造までを一手に行う工場を目指したのだ。

 開発と技術の要員を3倍に増やし、小回りの利く多品種少量生産体制を構築。高品質な製造に力を注いだ。06年度(07年3月期)は売上高が下がったものの、開発力を強化する戦略が功を奏し、07年度以降は上昇。05年度まで3億台湾ドル規模だった売上高が、昨年度には6億台湾ドルまで成長した。
 

スペシャリストがラインを組んで作業



 工場は、現在130人体制。他社の工場と比べると小規模だが、「スキルが高い人員がいるからこそ、少ない人数でも取引先の要望に応じて納品することができる」と、近藤社長は断言する。

 スキルが高いと断言できるのは、「従業員が検定を受けているから」(近藤社長)だ。世界標準の品質を目指すため、従業員は、それぞれの持ち場を担当するにあたって、必ず同社が定める試験を受ける。試験に通らなければ、担当に就くことはできない。「ハンダ付けやネジの取り付けなど、どの作業を担当するにしろ、基礎がしっかりしていなければよい製品が完成しない」と近藤社長はかみしめている。
 

それぞれの持ち場で認定を受けたスタッフが作業

 生産はライン方式。製品ごとにラインを組み、ハンダや組み立て、検査などのスペシャリストが集まって一つの製品が完成する。各スタッフは担当業務に精通し、製品をつくるスピードは速い。
 

ヘッドホン組み立て工程(1)
 

ヘッドホン組み立て工程(2)
 

ヘッドホン組み立て工程(3)

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 ヘッドホンに比べて部品が小さいイヤホンは、細かい作業が多く、職人技が必要だ。
 

イヤホン組み立て工程(1)
 

イヤホン組み立て工程(2)
 

イヤホン組み立て工程(3)

 高品質を追求しているだけに、検査には非常に手間をかける。「徹底的に検査しています」と、近藤社長の言葉に力がこもる。
 

音質を入念にチェック

 完成品の出荷先は、日本が54%、欧米を中心とした地域が42%、台湾が4%という割合だそうだ。
 

完成品をダンボールに入れて世界に出荷
 

営業所をショールーム的な役割に



 オーディオテクニカ台湾が、次のステップに据えるのは、ブランドの確立。近藤社長は、「当社の製品を使っているとステータスが上がる、というイメージを定着させたい」という。そのため、台北市と高雄市にある営業所にショールームを設け、お客様に製品の特徴などをしっかりと説明できる環境を整えている。
 

大安区大安路沿いの台北営業所ショールーム

 とくに台北では、ブランドショップが立ち並ぶ大安区大安路沿いに店を構え、イヤホンやヘッドホンの販売のほか、使うシーンを想定したディスプレイや、体験コーナーを設けて、ブランドイメージの向上を目指している。こうした取り組みによって、「台湾の消費者は、他社と比べて価格は高いものの、よい製品だと認識しつつある」と自信をみせる。
 

ディスプレイは使用シーンを提案
 

飛行機のなかと同じ条件でクリアな音質を体験

 日本のメーカーがグローバルにビジネスを展開するには、「日本ならではの強みを訴えていくことが重要」と、近藤社長はいう。そして、文化や商習慣が日本に近い台湾だからこそ、「日本の技術を最大限に生かせる」と地の利を語った。(BCN・佐相彰彦)